2012年12月15日土曜日

真冬のサマータイム・ブルース

3.11福島原発以降の、初めての総選挙が明日行われる。
この選挙の大きな争点の一つに、脱原発があることは間違いがないだろう。

3.11以降から現在までにトーンダウンしてしまっている政党・政治家に投票する人も、原発の扱いは気になるはずだ。

私の選挙区は長年に渡り、自民党選出議員の牙城である。
民主党の嵐が吹き荒れた時でも、全くその強さは揺るぐことがなかった。

そこに、脱原発を訴える独りの俳優が立候補をする。

3.11以降、脱原発を訴えていた俳優にすぎない、と私は思っていたが、敢えて磐石の組織・地盤を持っている自民党議員の選挙区に挑戦をする、という構図に私は驚いた。

中選挙区の時代に、その自民党候補以外の枠を争い当選していた議員は小選挙区1人区になり勝てず、何度も国政を目指していたが、しかたなく杉並区長になった。

その彼も、今回の選挙では別の選挙区・別の政党で立候補し、国政を目指す。

そのような、誰もが自民党候補者しかいないと思っている区民の中に、その俳優は飛び込んできたのだ。

地盤が無く、政党もない彼は、少しでも勝てそうな地区で立候補をすればよいのにと、誰もが思うだろう。

その彼の演説を聞いていると、あるアーティストの歌が頭を過った。
RCサクセション・忌野清志郎の「サマータイムブルース」。

1988年に発表されたこの楽曲を、現在の目で見る。
その歌詞は、2011年3月11日以降をまるで予言しているかのようだ。

(前略)
熱い炎が先っちょまで出てる

東海地震もそこまで来てる

だけどもまだまだ増えていく

原子力発電所が建っていく

さっぱり分かんねぇ 誰のため?

狭い日本のサマータイム・ブルース


寒い冬がそこまで来てる

あんたもこのごろ抜け毛が多い

それでもTVは言っている

「日本の原発は安全です」

さっぱり分かんねぇ 根拠がねぇ

これが最後のサマータイム・ブルース


あくせく稼いで税金とられ

たまのバカンス田舎へ行けば

37個も建っている

原子力発電所がまだ増える

知らねぇうちに 漏れていた

あきれたもんだなサマータイム・ブルース


電力は余ってる 要らねぇ

もう要らねえ

電力は余ってる 要らねぇ

欲しくない
(後略)


まるで現在のことを見ているかのような、忌野清志郎のシャウトだ。

この作品が発表された1988年は、私は20代最後の年を生きていた。
29歳という大人が、あの時恥ずかしいまでも原発に無関心だったのを、あらためて思い知る。

この楽曲には、都立日野高校で忌野清志郎と同級生だった俳優の三浦友和もバックボーカリストとして参加している。
泉谷しげるの叫び声も聞こえる。
三浦友和は、挿入されたナレーションを担当していた。

参加した三浦友和によると、反原発の歌が収録されているという理由で、このアルバム『COVERS』は所属のレコード会社からは発売されず、他社から出したという。

今日を生きている我々は、その圧力がどこからかかったのかは明白に理解できるだろう。

誰かが永遠に原発の危険性を訴え続けていかないと、我々はいつもの日常に戻っていってしまう。

先日渋谷で、現職総理大臣の応援演説に遭遇した。
人は集まってきたが、盛り上がることはなかった。

その総理大臣が、我が街荻窪で応援演説をする場面に、今日遭遇した。
私が知る限り、現職の総理大臣が荻窪の駅前に立ったことはない。

彼らも必死なのだろう。

昨日の夜、荻窪駅の横の小さなポケットパークで、その俳優が演説をしていた。
聴衆は溢れんばかりで、拍手が大きく熱気に包まれていた。

総理大臣が応援に来るわけでもない、その独りの候補者は、どこまで奮闘をするのだろうか。

「サマータイム・ブルース」が収録されている『COVERS』には、多くのゲストミュージシャンが参加している。

クレジットは全てローマ字なので特定は難しいが、「サン・トワ・マミー」では、ピアノがYosuke Yamashita とクレジットされている。

あの山下洋輔かな、と思って想像してしまう。

同じ楽曲のバックボーカルに、Isuke kuwatake  というクレジットがあった。
イスケ・クワタケ氏である。
私はこれを、ケイスケ・クワタと読み、桑田佳祐のことだと勝手に思うことにした。

今、忌野清志郎が生きていたら、この日本をどのように憂うだろうか。 

参考文献
『COVERS』RCサクセション 1988年 キティレコード
「忌野清志郎のロック魂を語ろう」 三浦友和×仲井戸麗市 対談 『週刊現代』2012年12月1日号 講談社